「さ・・「ー!部活行くよ!」」
僕のすぐ先で、さんが立ち上がった。
少し前までは僕がいたその場所。
今彼女の隣にいるのは、名も知らぬ美術部員。
09.君の想い
九月。
最後の文化祭。
・・・さんはとても忙しそうだ。
明日に迫ったそれは、僕にもそれなりの負担をかけてくる。
「水鏡!その風船はそこじゃないっていってるだろ!!
それはこっちだって」
・・・・・・勘弁してくれ。
風船なんか壁につけなくてもいいだろう。
うちは、喫茶店なのだから。
結局僕が解放されたのは日が暮れ辺りが暗くなってからだった。
部活が忙しいのか、さんにはここ数日禄に会ってもいない。
「嫌われた、か」
あんな話をしてしまったし、仕方がない。
普通に生きてきた彼女にとって僕は恐ろしい存在なのかもしれない。
誰も好き好んでこんな男と一緒にいたいとは思わないだろう。
「みーちゃん、もう美術部見た?」
「いや・・・」
風子はにやっと僕に笑う。
ああ、これはろくでもない事を考えているときの顔だ。
「行くよ、みーちゃん!」
ちょっと待て。僕は行くとは言ってない。
風子に引っ張られたまま僕は美術室の前までやってくる。
後でこっそりくるつもりだったんだが・・・。
仕方なく僕は美術室のドアをくぐる。
どうやらさんは居ないようで、ほっと息をついた。
(2012.02.15)